Voice of the heart

綴ってます

最期


黒髪の美しい君が
最期に掴んでいたものが
紫陽花の花弁だったことに
涙した


長い長い小説の最期の一幕の様に
何の台詞もなく
終わりに抵抗するように
時間だけが緩やかに流れ
揺さぶられた感情のまま
動けなくなった


君も


僕も


哀しいとか
愛おしいとか
そんな思いではなくて
もっと尊いものに支配された


部屋に差し込んできた光さえ
二人の前では霞んで


黒髪の美しい君の
最期に微かに動いたものが
薄桜色の唇だったことに
涙した

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