Voice of the heart

綴ってます

台本


泣きながら書いた文章は
紛れもなく彼女の言葉なのに
どこか滑稽で
曖昧な虚実でしかなかった


彼がドアを開けたのは
初めからの筋書き通り
ただ受け入れるしかなかった


「蝉が鳴く前に終わりにしよう」
彼らしい言い方だった
そんな感性が大好きだった


ほんとだよ
大好きだったんだ


過去形でしか言えないなんて


それでも物語は続いてく


狭い部屋
乱雑に積まれた見もしない雑誌や
脱ぎっぱなしの服は
どこか滑稽で
曖昧な虚実でしかなかった

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